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扉の向こうに人がいます

「扉の向こうに人がいます」

こう書かれた扉をよく見かけます。私が勤めている会社のビルも階段部分は重い鉄扉が使われているため、このような表記があります。

ただ弊社ビルのその表記で一点おかしいのは、普通は“扉の押し手側”にその表記があるべきなはずなのに、“扉の引き手側”にそれが書かれているのです。

おわかりになられますでしょうか。

本来この表記は「勢いよく扉を開けたら、向こう側に人がいるかもしれないので気を付けてくださいね」という意味のはずなのに、弊社においてはその意味がなされていないのです。

引き手側に「扉の向こうに人がいます」と書かれていますが、勢いよく開けたとしても扉の向こうの人には何の影響もないわけです。

こうなってくると何が起こるかといいますと、扉の押し手側の人は向こうに人がいるということをあまり意識せず、結構な確率で勢いよく開けてしまうのです。

それはある朝のことでした。

私は基本的にエレベーターではなく階段を使うようにしているのですが、その日の朝も、社員の出社時間が重なる兼ね合いもあり、エレベーターホールには大量の人が並んでいました。

そんな人々を横目に私は「朝から並ぶだなんて、とても可哀想な人たちだなあ。それにひきかえ、私は爽やかに階段を駆け上る、なんて健康的な男なんだ!」と愉悦に浸っていました。

そしていつものように階段を使おうとすると、例の「扉の向こうに人がいます」の文字が見えました。いつ見ても意味のない表記だなあと思いながら扉を開けようとしたその時です。

物凄い勢いで開いた扉が、私のキ◯タマを直撃したのです。

男性なら、ドアノブを自分の方へ引いて身体(股間)を前進させたところに、扉のカドが直撃した苦しみをわかってもらえるかと思います。

私は悶絶しました。無意識に「おおふっ」という変な声も出てしまいました。唯一の救いだったのは、その開けた相手が可愛い若手女性社員だったということです。

彼女は「だだだだだいじょうぶですか!」と駆け寄ってきましたが、私は紳士的な態度で「ああ、大丈夫さ」と爽やかに答えました。(これはこれでご褒美のようなプレイだと自分で自分を納得させました)

それからというものの、私は「扉の向こうに人がいます」という表記を「物凄い勢いで開くことがあるから気をつけてね」と解釈できるようになりました。

そう考えると、引き手側にこの表記があることも意味があるように思えるのでした。